ベランダから四季便り〜もみじともみじ麩と食卓と〜
みなさんのお宅のお庭やベランダにはどんな草木が植わっていますか?
わが家の小さなベランダには、もう30年近く暮らし続けてくれている1本のもみじの木があります。
今さらですが、「もみじ」というのは本来は木の名前ではなく、「紅葉」すなわち「秋になって木々の葉が色づくこと」なのだそうですね。
なので、わがやのもみじも正しくは楓の一種。種類はわかりません。でも、今回はあえて「もみじ」と呼んでおきましょう。
昔、山の麓に住んでいた友人から分けてもらった10cm足らずの小さな小さなもみじの赤ちゃん苗。それが、30年近く、ベランダの窮屈な植木鉢で、2度ほど植え替えしただけでずっと命をともし続けてくれているのです。
わが家にとっては、これはもうりっぱな守護神の木といってもいいくらい。
この守護神は、暦毎に色を変えて、殺風景になりがちなわがやの暮らしごとに季節の彩りというアクセントをさりげなく添え続けてきてくれました。
何にも手入れをしていないのです。
草木の世話が得意な父が生きている頃は、毎週のようにわが家にやってきてはベランダの草木の手入れを一手に引き受けてくれていたので、私はお水やりさえ忘れるほどのいいかげんなつきあいしかもみじたちとはしてきませんでした。
朝早く出勤して夜遅く帰宅する、ベランダの様子さえ見るヒマもゆとりも無かった頃、ある朝ブラインドを上げると突然に(本当は突然なんかではないのですか)燃え上がるような赤に染まったもみじが目に飛び込んできて、「もう秋なんだ・・・」と実感したのを今でもはっきり覚えています。
時間に少しゆとりができた今頃は、室内で季節の移り変わりをもみじに託して眺めることが楽しみにはなりましたが、それでも草花を食べ散らかしてしまう猫たちの攻撃を免れる唯一の場所は、トイレの中。
お客様がいらしたときだけ、たくさんの監視の目をちょうだいして、猫たちの魔の手をかいくぐり、居間の床に置くことがなんとかできるという状態です。
もうひとつ、もみじのすばらしいところは、お料理に添えると一気に季節感が生まれること。
桜や柿の葉っぱも同じですが、やっぱりもみじほど日本の食卓に四季を届けてくれる葉はないのではないかと思います。
さて、今回は、本物のもみじの話だけではないのです。
生麩、をご存知でしょうか?
生麩とはなんぞや?はウィキペディアに任せるとして、私は日々のごはんにもよく生麩を使います。
特に気に入っているのは、京都五条にある元禄二年(1689年)創業のお麩屋「半兵衛麩」さんの生麩です。
粟麩によもぎ麩、ごま麩などなど、通常品もたくさんありますが、中でも「季節の花麩」は、春夏秋冬発売が楽しみな美しい生麩です。
半兵衛麩さんのお店紹介はこちら→http://www.hanbey.co.jp/store/index.html
もみじ麩は秋だけのものだと思っていらっしゃいませんか?
もみじはもちろん秋の紅葉の代名詞、今くらいの季節になると他店からもたくさん鮮やかな彩りのもみじ麩が売られ始めます。
ですが、半兵衛麩さんでは、季節に合わせて青もみじ麩、初もみじ麩、もみじ麩と三種類、ほんもののもみじと同じように彩りを変えて期間限定で売りに出されるのです。
これはもう感激もの。
中でも「初もみじ麩」は、初夏の「青もみじ麩」と秋の「もみじ麩」のはざまにほんの少しの期間だけ売り出されるので、ちょっと忙しくしているともう販売が終わっていたということもある貴重品。
初もみじ・・・その秋、初めて色づいた紅葉
この言葉の意味そのままに、ほんのりと色づいたもみじがまさに今の季節を表していて、使うときにはいいようのないワクワク感をひとり感じてしまいます。
今年は9月の早いうちに姿を消し、今はもう「もみじ麩」が早々と取って代わって店頭に並んでいます。
あでやかな色のもみじ麩は今の季節にはまだ使いたくないのになぁ、と思っていた私ですが、オンラインショップにある注意書きにはこんなステキな説明が・・・
「時期によって色合いのバランスが変わります」
まるで本物の紅葉のように色合いのバランスを変えながら店頭に並ぶというもみじ麩に、日本の食の細やかさや遊びごころやプライドを感じてひとり感激しています。。
今年の秋は、もみじ麩はまとめ買いせずちょこちょこ買い足して、色合いの移ろいを楽しんでみたいなと思います。
おべんとうや毎日のおかずにちょこんと添えれば、小さな秋がやってくる、そんな便利でかわいいもみじ麩をぜひ利用してみて下さいね。
そうそう、いちょう麩もありますよ!
半兵衛麩さんのオンラインショップはこちら→http://www.hanbey.jp/
投稿者プロフィール
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料理教室「茶飯事会」主宰。食卓カウンセラー。ときどき、獣医師。
「ていねいな暮らしはちょっぴりていねいな日常茶飯事から」をコンセプトに、「おとなの飯事(ままごと)〜四季折々のばらずしの会」や季節のごはん教室、出張ごはん、など、誰かの食卓をシアワセにするためのお料理活動を展開中。
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