心を癒す食卓〜室田洋子先生にお会いして〜

人生には、折にふれて何度も読み返したくなる本、そして人に勧めたくなる本が何冊もあります。

そのうちの代表を何冊か挙げるとすると、私の場合

  • アン・モロウ・リンドバーグの「海からの贈り物」
  • 加藤幸子さんの「苺畑よ永遠に」
  • 山田桂子さんの「待ちの子育て」
  • 友人でもある津田和壽澄さんの「孤独力」
  • 室田洋子先生の「心を癒す食卓」
  • そして最近では、土井善晴さんの「一汁一菜でよいという提案」

先日のこと。

この中の「心を癒す食卓」の著者、臨床心理士の室田洋子先生を囲んでごはんをご一緒する機会がありました。

 

子どもたちの食育に関心のある方ならきっともうご存じのはずの室田先生のこの本を、私は恥ずかしながらつい2年ほど前まで手に取ったことがありませんでした。

 

私がちょうど「食卓カウンセラー養成講座」を受講しているときに紹介を受け、読みたくなって早速購入したのがきっかけでした。

本を開いたときの衝撃といったら。

目次だけでもうがんがんと胸に響きます。

読んでみると、そうそうとうなずきながらも、「ああ、子どもたちが幼い頃にこの本と出会っていれば・・・」と、仮定法過去完了形のことばもたくさん浮かんで来たのです。

 

「よく噛んでね」

「忙しいのにせっかくがんばって作ったんやから、残さんと食べてね」

 

食卓で、子どもたちにこんなことばを投げていたり。

子どもたちの大好きなものを作ったのに、直前に些細なことでケンカして、無言の食卓になってしまったり。

反省をすればきりがないほど、無意識のうちに食卓を楽しくない場所にしてしまっていたことを、この本と出会って気づかされました。

 

先日初めておめにかかった室田洋子先生は、本の語り口そのままに穏やかで優しくてそしてユーモアのあるステキな方でした。

その集まりの食卓でも、持論を熱く述べられるのでもなく諭すのでもなく、ただ日常の会話の続きのように、参加者の悩みに優しく寄り添った答えをそっと導き出して下さるのでした。

 

今までどれだけの母と子どもたちが、先生のこの語り口で再生してきたのだろうと、私は端から何とも言えない感動でその会話を聴いていました。

 

帰宅して、少し日が経った今日、あらためて著書を手に取り文字を目で追ってみると、先日の先生の声と口調が蘇ってきて、あたかも先生のお話しを伺っているような錯覚にとらわれました。

 

私には、もう小さな子どもたちはいませんが、大人同士でも同じ事。

食卓とは、非常に人間関係的な場所です。そこにつどう人々との人間関係の質が象徴的に、また凝縮されて現れる場です。 そう考えると食卓は、心を癒す力を持っていますし、同時に心を凍らせる力も、心を立てなおす力も、心を育てる力も、心を砕く力も持っています。

先生によると、癒しとは

癒しとは、「そうだよね」「そういう気持ちだったんだね」と受け入れてもらうことによって心が満たされ、楽になり、前へ進んでいけるという作用です。自分の存在そのものが受け入れられることこそが、心を立てなおすコミュニケーションの基本的なポイントであるのです。

食卓は、そこに集う人の再生の場所。心と体を整える場所。

人と共に食べることによって、心を、かかわりを、あたたかな心くばりを私たちは「食べている」のです。そしてまた、相手の心を受け入れ、共にいるという安心感も「食べている」のです。

大勢の人が集まれば集まるほど、同じ食卓を囲むどの人にもそうであって欲しい、とこの頃特にその思いを強くしています。

そのひとりひとりの思いに寄り添い、さりげなくお料理でその人に対する自分の気持ちを表す、家族であっても友であってもお客様であっても。

それが私の「食卓カウンセラー」としての在り方ではないか、いやそう在りたい、最近こんなふうに思いが形を取り始めました。

あらためてその事に気づかせてもらうために、先日のごはん会が人生の中のあの日に用意されていたんだと、これは私の都合のよい解釈かもしれませんが、ひとりうれしくなっています。

 

何度も読み返したくなる本というのは、文章の1つ1つすべてを紹介したいくらい、心に響く言葉が繋がっているものです。

室田先生の本も然りです。

その中でわたしがいちばん好きな文章を紹介させて下さい。

「残さないで食べなさい。もう少し食べなさい」と言われ続ける食卓は、自分の今の気持ちを否定されていると感じさせ、心を開かなくさせることがあります。ところが、たとえば、「この里いもね、田舎のおばあちゃんが送ってくれたのよ。おばあちゃんは、ほんとにまめね」などと話し合う食卓では、おばあちゃんの心もいっしょに食べることができます。おばあちゃんは本当にみんなのことを思ってくれていると感じられたとき、ただゆでただけの里いもがとても価値のあるものになってくるのです。

 

「おばあちゃんがせっかく送ってくれたんだから、ちゃんと食べなさい。でないと、おばあちゃん悲しむよ」と言うのではなく、ただみんなでいっしょにホクホクの里いもからおばあちゃんの働く姿に思いを馳せる・・・。

本からの受け売りではなく、そして諭すのでも熱く語るのでもなく、こんなふうにさりげなく心と行動で表現できる人に、私は今からでもなりたいと思います。

室田先生、お目にかかれて光栄でした。

 

室田洋子先生の紹介記事はこちらです→

 

 

 

 

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