日々是好日
昨日のこと、お昼間に少し時間が空いたので、食材買い出しのついでに観ておきたかった映画「日々是好日」をひとり観てきました。
私と同い年のエッセイスト、森下典子さんのエッセイ「日々是好日」の映画化、というよりも、先日亡くなった樹木希林さんの出演作と言うことで、「あん」以来どうしても観ておきたかった映画でした。
近くに住むお茶の先生のところでお茶を習い始める大学生のそれからのおはなし。
ちょうど、高校2年生の時にお隣のおばさんがお茶とお花の先生をされていたご縁で、受験シーズン前まで部活の合間にその両方を習いに行っていた自分の思い出と少し重なりました。
畳の縁を踏んではいけないとかすり足で歩くとか、初日に初めてお茶の作法を見たときにとにかく可笑しくて可笑しくて笑いをぐっとかみしめていたことや、お菓子をいただくのが楽しみで通っていたことなどなど、習っていたのは短い期間でしたが、そんな当時のいろいろな記憶が映画を見ながら蘇りました。
仕事終わりの職場では毎週1回先生が来て下さって、有志が残ってお茶とお花のお稽古をしています。以前から誘われていたけれど、ただでさえ忙しい放課後にお茶を習う気持ちのゆとりはないとお断りしていたのですが、1年ほど前から私も寄せてもらって月に1度ほどお稽古を受けさせてもらうようになりました。
時間までにバタバタと仕事を片付けてお稽古場になる教室に駆けつけるのですが、不思議とお稽古中は仕事のことはすっかり忘れ、終わった後にはとてもリラックスしている自分がいるのに気づきました。
やっぱり、お茶はいいな。もう一度ちゃんと習いたいな、と思いつつも職場を離れた今はなかなかお稽古にも参加できていなくてとても残念です。
映画にも出てきたように「頭で覚えようとするのではなく、何度もやっているうちに身体が覚えて流れるような所作になってくる」と職場にいらっしゃる先生もおっしゃっていました。
確かにそう。
流れるようでいて指先の隅々にまで気持ちが行き届いているそんな所作のできる自分を想像してみたら、うっとりします。
高校生の時の私は、この映画に出てくるミチコのように一つ一つ細かに決められた流儀を古くさい伝統の遺物としか思えなかったのに(本当に恥ずかしい)、今になってみるととてもすばらしい様式美と思えるのは、やはり長く生きてきたおかげなのだと感謝したくなります。
映画に出てくる、季節毎に趣を変えるお茶室の設えやおいしそうな主菓子や希林さんの召されている着物、つくばいに滴る水や雨の音、茶釜から汲まれるお湯の音・・・何気ないストーリーの中に心が満たされるものがたくさん散りばめられていました。
日本にいにしえから息づくお茶の心。
私などまだまだはるかに遠く及びませんが、それに少しずつでも近づけるように日々暮らしていきたいと思わせてもらえた映画でした。
森下さんのエッセイもじっくり読んでみようと思います。
そういえば、映画にも出てくるフェデリコ・フェリーニ監督の「道」。
ジェルソミーナの哀しみに胸を痛めて、この映画をきっかけにお小遣い貯金をはたいて映画音楽大全集のレコードを買ったりしていた私は、きっとちょっとおませで変わった中学生に見えていたかもしれないと、そんな余分なことまでこの映画を観て懐かしみました。
さ、今日は霜降の茶飯事会の最終日。
みなさんをお迎えする用意を整えましょう。
投稿者プロフィール
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料理教室「茶飯事会」主宰。食卓カウンセラー。ときどき、獣医師。
「ていねいな暮らしはちょっぴりていねいな日常茶飯事から」をコンセプトに、「おとなの飯事(ままごと)〜四季折々のばらずしの会」や季節のごはん教室、出張ごはん、など、誰かの食卓をシアワセにするためのお料理活動を展開中。
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