ミナのコートが似合う人に
ミナペルホネンminä perhonen のセレクトショップに、80歳を過ぎた販売スタッフさんがいる。
それを知ったのは昨年秋のことでした。
その驚きとそこから受け取ったエネルギーのようなものに背中を押されて、ずっとずっと欲しかったミナペルホネンのタンバリンtambourineのコートを昨年末に買いました。
もう20年近くも前のこと、このタンバリン柄のコートで初めてミナペルホネンというブランドのことを知り、デザイナーが北欧の女性などではなくて、皆川 明さんという日本人の男性だということに驚いて以来、ミナペルホネンのコートはずっと私の憧れでした。
でも、コートを手に入れる決心はなかなかつかないまま時は過ぎ・・・。
なぜって、金額もそうだし、私の年齢で・・・という微妙な気後れもあったから。
そんな迷いを一変させたのは、あるサイトで見たこの一行。
〈年齢は問いません。人生経験豊かな方、心が健康で100歳! 大歓迎です〉
4年前に青山にオープンしたミナのセレクトショップ「call」のスタッフ採用時の求人広告なのだそうです。
そう、冒頭のスタッフさんが働いておられるお店です。
広告には続きがあって、
「大切なことは自分の人生で紡がれた経験を通して、ゲストのみなさまと心に残る時間を共有してみたいということ。 そして何より働くということに日々の喜びを見出したいと思う人を募ります」
まさに、私がこれからの自分の仕事の核にしたい在り方がそこに綴られていたのです。
この広告を知ってから、ミナペルホネンの洋服を着てみたいという想いが加速度を増していきました。
とびきりキュートなだけでなく、こんな想いをもつデザイナーさんの下でていねいに作られた洋服に袖を通して、自分もこの想いをしっかり胸に抱いて明日からの道を歩んで行きたい。
真剣にそう思いました。
そうして今、何の迷いもなく1着のコートが私のものとなりました。
お金持ちの人からみたら迷うほどのこともない買い物なのかもしれませんが、私にとっては決して安くはない金額で、しかも金額以上に価値のあるコートです。
このコートを眺めていると、なんとも幸せな気持ちになるのです。
私の大好きな柄だから、というばかりでなく、コートからこんなメッセージを受け取るのです。
時を経ることを恐れないで穏やかに軽やかに前に進もう。
時が経てこその味わいや価値を優しくさりげなく身につけよう。
老いていくことへの漠然とした不安や若い世代に対する劣等感を希望と勇気へと変えてくれるメッセージ。
ちょっと大げさに聞こえるかもしれませんが、私の心にはそう響いたのです。
ミナのコートに似合う人になれるよう私が身につけていくべきものはまだまだたくさん。それを見つけるのもまたこれからの人生の楽しみです。
時を経て、ミナのコートが似合うステキな人になれていたら、それはとてもうれしいこと。
私とこのコート、これから一体どれだけの冬の季節をともに過ごせるかはわかりませんが、一緒に時を刻み、お互いに味のある人生の思い出をゆったりと紡いでいこうと思います。
私に限りない勇気をくれるコートの話。
そんなこんなをブログにしたためようかと思いながら、何気なくつけた昨日の朝のテレビ番組「日曜美術館」。
なんという偶然か、ミナペルホネンと皆川 明さんの特集でした。
東京都現代美術館で昨年11月から今年の2月16日(日)まで開催中の「ミナ ペルホネン/皆川 明 つづく」展。
2020年6月27日(土)—8月16日(日)
兵庫県立美術館でも巡回展が決まりました。
投稿者プロフィール
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料理教室「茶飯事会」主宰。食卓カウンセラー。ときどき、獣医師。
「ていねいな暮らしはちょっぴりていねいな日常茶飯事から」をコンセプトに、「おとなの飯事(ままごと)〜四季折々のばらずしの会」や季節のごはん教室、出張ごはん、など、誰かの食卓をシアワセにするためのお料理活動を展開中。
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