家族の喜ぶ顔が見たいから〜マンツーマンレッスン〜

先月のこと、双方のご両親を招いてお祝いするお子さんの1歳のお誕生日会のために、おもてなし料理を習いたいと連絡をくださった方がありました。

少しメールでやり取りをしてから、まずはお目にかかって打ち合わせを、とわがやに来ていただいてお昼ごはんをご一緒しながらお話を伺い、作ってみたいメニューをいくつか選んで献立を組み立て、レッスンする日を決めました。

そして、その待ちに待ったレッスン日が今日でした。

4時間位かけて、お誕生日会当日のメニューをひととおり全部いっしょに作っていくのですが、中でもいちばん作ってみたいとおっしゃったのが、「さくらの花びら舞うばらずし」でした。

一見難しそうに見えはしますが、前日までに具材を作っておけば、実は当日は混ぜるだけ。

花びらを型で抜いたり、すし飯を混ぜたりは、家族みんなで取り組めばとても楽しい作業になります。

「いつもはすし太郎ばかりなんですけどね」

子どもたちが小さくて仕事も忙しくて、そんなときには「すし太郎」だっていいんです。

ちょっぴり後ろめたい気持ちを持ちつつも、でも、帰宅してすぐに作れるありがたさには代えられない。

何を隠そう、私も昔すし太郎には大変お世話になりました。

だから、その気持本当によくわかります。

そうしてでも、3月3日の夜の食卓にはちらしずしを用意したい、むしろその心意気の方をうんと自分で褒めましょう。

すし太郎で作ったちらしずしに、トッピングの飾りだけは意地でも手作り。前の晩に急いで作っておいた錦糸卵。それにスモークサーモンを飾り付けて。

「保育園でもお昼はちらしずしだったよ」と言われてはたと気づくけど、子どもたちは喜んで食べてくれて…。

そんな食卓でのやりとりも今では懐かしい思い出です。

その頃の自分を思い出すと、「よくがんばったやん」とエールを送りたくなります。

私のことはさておいて、今日来てくださった方もお料理は本当に苦手とおっしゃりながらも、フルタイムの勤務をこなしながら、がんばってなんとか日々のごはんの支度をされているとのこと。

この日一緒にごはんを作りながら、子育てのこと、仕事のこと、PTAはどうする?とか、学童は?とか色々なおしゃべりをしていると、いつのまにか自分の若い頃とこの方の現在の日々を重ね合わせている私がいて、お誕生日会の食卓での楽しいやり取りばかりでなく、一生懸命な日々の暮らしを心から応援したい、そんな気持ちになりました。

忙しいお仕事と子育ての毎日ですが、今日はご主人が留守を守ってくださっているそうなので、安心してお料理に没頭、ばらずし以外にも数品作って気づいたら5時間が経過していました。本当にお疲れさまでした。

「すし太郎とはやっぱり比べ物にならないおいしさ!」

そうなんです、にんじんとごぼう、干し椎茸を炊いた具材は、それだけでも十分おいしいんです。

「もっと面倒だと思っていたけど、意外と作りやすい」

そうそう、具材も合わせ酢もほんのちょっと頑張れば、前日の夜にできてしまいます。ごぼうだって、スライサーを使えばあっという間に千切りに。

お料理は苦手だから毎日台所に立つことがストレス、とおっしゃるけれど、こうやってわざわざお子さんのお誕生日会のためにお料理を習いに来てくださるのだから、ほんとうはお料理が苦手なのではなくて、毎日毎日時間に追われながらのご飯の準備が心の負担になってらっしゃるのかも、そんなふうに思いました。実際に、食材を刻んだり、すし飯を混ぜたりの手際はとてもすばらしかったから。

お昼ごはん用とお持ち帰り分たっぷり5合分のすし飯です

「わあ、やった〜」と喜んでくださる姿を見て、私もほんとうにうれしくなりました。そう思えるって、お料理が好きだってことですものね。

今日は、自らの手できれいなばらずしを作り出す楽しさにも触れていただけたかな。

忙しいときは忙しいなりに、手を抜いても大丈夫。今日みたいな「作る楽しさ」を少しずつ積み重ねて、お料理のハードルを段々と低くしていってくださいね。

お誕生日会の当日はご主人やお兄ちゃんお姉ちゃんにも手伝ってもらいます、とのこと。

きっとご家族にとっても心に残る思い出の食卓になるにちがいありません。

ご家族のアイドルである末っ子ちゃんの、ステキな記念すべき1歳のお誕生日会になりますように。

応援しています。

今夜は折しも桃の節句。

お昼にたくさん作ったばらずしやおかずをお持ち帰りしてもらいましたが、家族にとっても好評だったと早速連絡をいただきました。

よかったよかった!

投稿者プロフィール

清水かおり
清水 かおり
料理教室「茶飯事会」主宰。食卓カウンセラー。ときどき、獣医師。

「ていねいな暮らしはちょっぴりていねいな日常茶飯事から」をコンセプトに、「おとなの飯事(ままごと)〜四季折々のばらずしの会」や季節のごはん教室、出張ごはん、など、誰かの食卓をシアワセにするためのお料理活動を展開中。