思い出ごはん〜祖母のおすもじ
今は食のお仕事をしていますが、小さい頃は食べ物の好き嫌いのひどいこどもでした。
野菜は苦手、お肉も嫌い、食も細くてずいぶんと母を困らせました。何食べてたんでしょうね、もう。
そんな中で、母を手伝うためにしばらく同居していた祖母が作ってくれる「おすもじ」はわたしの大のお気に入りでした。
「おすもじ」。
聞き慣れない言葉ですが、祖母はばらずしのことをそう呼んでいました。
日頃はこどもの興味を惹かない伝統的な和食を作る祖母でしたが、わたしになんとか食べさせようとしたのでしょう、しょっちゅう「おすもじ」を作っては食卓に出してくれました。
お雛祭りや特別の日には錦糸卵やかまぼこで飾られたはいたものの、ふだんはとりたててよそゆきではない、酢飯に何種類かの具材の入っただけのおすもじ。
それでも、その甘酸っぱい酢飯の味の中では、ごぼうやにんじん、大嫌いな乾椎茸でさえもおいしく感じられたから不思議です。
寒い時期には、翌朝はホカホカの蒸しずしになって朝ごはんに。
それを食べて出かける朝はちょっと元気になれたこと、50年近く経っても覚えています。
わたしが今おすし教室でお伝えしている季節のばらずしはちょっとよそゆきのものですが、その原点はこの祖母が作ってくれたおすもじにあります。
飾り気がなくてもそれだけでおいしそう。
食卓に上るとうれしくて、ちょっと特別な気持ちになって、そして口に入れるとホッとする味。
わたしの完食が、きっと祖母にとっては何よりのうれしさだったんだろうなあ。と、孫ができた今頃になって祖母の気持ちに寄り添ってみたりしています。
ありがとうね、おばあちゃん。
投稿者プロフィール
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料理教室「茶飯事会」主宰。食卓カウンセラー。ときどき、獣医師。
「ていねいな暮らしはちょっぴりていねいな日常茶飯事から」をコンセプトに、「おとなの飯事(ままごと)〜四季折々のばらずしの会」や季節のごはん教室、出張ごはん、など、誰かの食卓をシアワセにするためのお料理活動を展開中。
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